海運業界のリスク対応

先日、当社では海運会社向けのセミナーに、アメリカのビジネスパートナーのサポートで参加しました。
海運業界は24時間、365日、世界各国の港湾施設や海路を数えきれないほどの船が行き来をするなか、船の座礁や衝突、積載物による事故はもちろん、昨今は海賊によるシージャック、難民問題といったリスクと常に向き合わねばならない業界です。
原油漏れや火災等が沿岸海域で発生した場合、地域経済や生活へ与えるダメージはもちろんですが、企業そのものの経営を揺さぶる問題となってくることもままあります。
また一旦クライシスが発生したとき、いかに迅速に事故処理に対処するかが求められる一方で、現地でのメディア対応を疎かにすると企業評価へのさらなるダメージともなりかねません。
そうした事態にならないよう、日ごろの訓練のなかでメディアとどう対応するのか、準備をしている企業も増えています。
さて、そのための準備はできているでしょうか?
昨年アメリカ国内で起きた化学工場による流域河川への化学物質漏れ事故は、周辺流域の飲料水や生活用水をシャットダウンさせる、という事態に発展しました。
地域住民のフラストレーションが高まるなか、ようやく記者会見を開いたCEOですが、これがまた驚くべき対応で、住民のイライラをさらにエスカレートさせる事態となってしまいました。
”Rachel Maddow Slams West Virginia Chemical Company’s Handling Of Toxic Spill”
要約すると以下のような内容です
「ヴァージニア州で発生した化学物質による河川汚染は、発生から2日目の夜、当事者である会社の社長がようやく記者の前に登場。ところが開口一番「今日は長く酷い日だった」と愚痴をこぼした後、ペットボトルを取り出して水を飲み、そのまま立ち去ろうとして記者に「質問は終わってない」と制止される始末。
周辺住民が水が手に入らなくて大変な一日を過ごしているというのに、なんとも無神経な対応に番組のキャスターもあきれ顔」
事故が発生したとき、まず情報の収集と整理、迅速な公開が基本です。
そのうえでなるべく早い段階でこうした会見を開くべきでしたが、そのタイミングすら遅くなったうえ、この態度で会見をされてはメディアはもちろん、テレビを見ていた住民はどんな思いをしたでしょう?
ちょっとした想像力を欠いたことで、工場のイメージはもちろん、地域とのコミュニケーションも破綻させてしまった責任はトップとしてはあまりに重かったと思います。