2015年11月2日
「伝える極意」長井鞠子著(集英社新書)
表題はNHKの人気番組「プロフェッショナル~仕事の流儀」にも登場した通訳者のパイオニア、長井鞠子さんが昨年出版した著作ですが、最近読んだ本のなかで深く印象に残りました。これから通訳者として活躍したい、という方はもちろん、PR業界で働く我々やビジネスに欠かせないコミュニケーションのヒントにあふれたビジネス書です。
PR会社に限らず、仕事には常にコミュニケーションがついてまわります。コミュニケーションなしで仕事ができる、人と終日コミュニケーションなしに過ごせることはほとんどないといっていいでしょう。
しかし、どう相手に自分の提案を納得してもらうのか、お客様のニーズはなにか課題を探る、社内で円滑に業務をすすめるなどなど、コミュニケーションをめぐる課題は多いですよね。特に我々のような業界ではまさに「伝える極意」をもっているか否かでPR活動の成否を左右するといっていいかもしれません。
相手に届く言葉
日ごろPR戦略を立案し実施していくPRパーソンは、日常的に、企画プレゼンから実施、結果まで、コミュニケーションの底力が問われ続けるプレッシャーのなかにいます。
お客様の課題を確実に把握し、メッセージを誰にどう伝えるのかを考えたとき、長井さんの「それは相手の心に届くのか」という呼びかけは、私たちPR会社に籍を置くものとして、襟を正して心にとどめなくてはいけない言葉です。
どんなにコンテンツそのものが素晴らしくても、それを伝えなくては意味がありません。伝えたい相手にどうやって好感をもってもらうのか、理解してもらうのか、伝える手段は間違っていないか?もしかしたらそれは手前勝手すぎないか?と常に自分自身に問いかけながら、日々変化する社会環境に合わせ柔軟かつ、芯のある姿勢を持ち続けることが大事だと思います。
まさに「伝える極意」ですよね。
ところで以前、通訳をお願いしていた方と打ち合わせをしたとき、通訳業という仕事について「同時通訳を現役として続けるには年齢的な壁が立ちはだかる」と聴いたことがあります。集中力や頭の回転、聴力、記憶力など一般人の想像以上に体力のいる仕事だそうです。
長井さんはその定説を覆し、集中力と体力を維持しながら、第一線の通訳者として活躍し続けていらっしゃる、その仕事への姿勢、努力には感服してしまいます。
1943年生まれ、現在72歳で現役通訳者としてご活躍、というのはほんとにすごい方です。
仕事であれ、なんであれ生涯現役、というモチベーションは大切だと感じた次第です。
(ふ)