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ニュース・コラム

食生活ジャーナリストの会 シンポジウム 聴講報告

2016年3月19日
PPC EYES




先月26日、食生活ジャーナリストの会(JFJ)の公開シンポジウム「メディア・バイアスをどう考えるか」を聴講しました。時間の関係で後半しか出られなかったのですが、小島正美氏(JFJ代表幹事・毎日新聞記者)がコーディネーターをされたパネルディスカッションでは、メディアの方々の視点や日頃の葛藤の一端を垣間見ることができ、勉強になりました。折々に取材などでお世話になる機会をいただいていた小島氏の、ざっくばらんで機転たっぷりのコーディネイトも素晴らしく、予想外の(?)面白さでした。
少し時間が経過しましたが以下、簡単に報告です。
ディスカッションでは、基調講演をされた木下冨雄 先生(京都大学名誉教授、社会心理学の大家)を除く 3名のパネリストが、それぞれ10分ずつ発表された後、「メディアバイアス」について活発で忌憚のない議論が繰り広げられました。

<各パネリストの発表概略>
堀口逸子氏(長崎大学准教授、食品安全委員会委員) 
いくつかのステップを踏んだ調査(但し、東日本大震災前に実施)によって、食品安全にかかわる職種(食品安全委員会専門委員、全国の食品衛生監視員、管理栄養士・養護教諭など)の方々の間で、食品安全に関する認識や、消費者に食品安全についてどのようなテーマを啓発すべきかという意識にズレがあることが分かった。小学校の家庭科の先生・養護教諭のアンケート調査で「100%安全な食品がある・少しそう思う」との回答が4人に一人いること、学校現場では食品の安全として優先度の高いテーマは「アレルギー」、「食中毒」など。食品安全委員会が「リスクの考え方」をテーマにしたいと考えても難しいことが分かった。

楊井人文氏(日本報道検証機構代表・弁護士) 
報道品質を向上させる取り組みとして誤報検証サイトGoHoo(ゴフー)を運営し、主要メディアの誤報を集約、可視化。
新聞記者から弁護士になり、メディアの在り方に問題意識を感じていた。東日本大震災後、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を海外メディアが報じたが、国内の大手メディアは報道しないどころか、「壊れている」という報道もあり、これをきっかけに活動を始めた。
対象メディアは全国紙、ブロック紙、NHK、通信社。ネット時代となっても、大半のニュースは上記のマスメディアが情報源となっているため、マスメディアの信頼度・影響力は依然として大きい。 GoHoo が行うのはFACTチェック。事実関係に誤りがあるかどうか、エビデンスの提供、何が根拠になってこの記事が正確でないかを提供。上記のSPEEDIについての1回目の誤報から1000本近くの誤報を発信している。
311の後のメディアの放射能、原発をめぐる情報で信頼性が低下した。メディアにもリソースや時間などの限界があり、メディアだけに問題があるというのではない。ジャーナリズムの質を高めるには国民も責任を担うべきで、その仕組みが社会に必要、同じ空間で問題意識を議論し合うことが大切だと考えている。

大村美香氏(JFJ会員、朝日新聞編集委員) 
非科学的な情報がマスコミで発信されてしまうのはなぜか、また、記者が持つバイアスについての考察。
例えば「占い」は、メディアも読者も、お互い、科学的でないことを分かっていて発信し、受け取っているように、非科学的な情報を発信していけないということではない。問題は科学的であるといいながら科学的に誤っていることを伝えること、として、昨年秋にネット上から問題点を指摘された「シャワーヘッド 水を通せば殺菌」(トルマリンが組み込まれたもの) の記事を例に挙げて考察。
また、「こういうものが流行っています」という記事についても、「スーパーフード」について「流行っていて問い合わせが殺到している」というトーンで取り上げた記事や、トマトの成分についての研究結果報道などを例に、メディアとして健康効果を認めたわけではないが、「結果的に知らしめているではないか」という指摘を受けることなどを説明。
大村記者は、一方で、誤っていることとバイアスがかかっていることの境目が難しいが、同じテーマについてどのように伝えるかという点には、記者個々のバイアス(=視点)が当然あるのではないか、と考察。



***
3名の発表の後はめくるめく展開でした。これをまとめるのはとても難解ですので、流れだけですが、朝日新聞の「科学的でない」という誤報(シャワーヘッドの記事)が、西部のローカルで出た記事がインターネット版に掲載され問題の的になったそうで、そこからネットの影響の大きさに始まり、新聞での誤報や反論の扱い方について海外と日本の比較、「○○と言われている」という書き方について、リスクの相場観をどう表現するかという問題、メディア全体として醸成するバイアス、等々と話が尽きず、盛り上がったまま終演となりました。
会場からは、「メディア全体としてブームを作っているのではないか」など、いくつか鋭い意見がありましたが、メディアと市民が互いの視点・意識を共有しあう、少なくとも、視点にずれがあることを認識しあうことが大事で、メディア側、市民側で共にメディアの質を高めていく試みにつながるように感じました。
また、今回のお話を聞いて、PRの仕事上、メディアのバイアスを意識することは重要だと改めて思いました。「バイアス」という言葉にはネガティブな響きが強いですが、もう少し幅広く、「視点」という意味にとらえることで、ヒントにできそうです。
実は、この前日は福岡出張で、夜、博多から新幹線と寝台を乗り継いで朝、到着したあとの寝不足を抱え、シンポジウムには睡魔の不安(いえ、期待?)で出席していました。とても寝るところではなく、目も耳も全開でした。
次回が楽しみです。(穂)

*食生活ジャーナリストの会 http://www.jfj-net.com/ 
*マスコミ誤報検証・報道被害救済サイト GoHoo http://gohoo.org/  


   
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