今月の読書 (1)
◆今月の読書/メディア関連の3冊(2018年7月) 気分転換に最適な書店ウォーキング。今月初め、TUTAYA神谷町店で、メディアをテーマにした本が目についたので、個人的興味で3冊読んでみました。 『新聞大学』 (外山滋比古著/扶桑社文庫) ベストセラー『思考の整理学』の著書で94歳にしていまだ著述や研究活動に精力的な外山滋比古氏が、「中高年になって大切なのは『自分を新しくする』こと」と語り、そのために最良な教科書として、日々、広範囲な分野からニュースを伝える新聞の読み方を指南。新聞の約40ページをパーツごとに読み解き活用ヒントを伝えています。 通り一遍に新聞がよいと礼賛するわけではなく、氏の見識ならではの薀蓄やユニークな批判も込められていて、何より、シンプルで率直且つリズミカルな文体で、驚くほど読みやすい説教本でした。 英語の「ナイト・ゲーム」を「ナイター」と表現したのは新聞記者たちが考えたそうですが、この単語をめぐる、言語学者で『英語青年』編集長を長年務めた氏ならではが有するエピソードも興味深いです。 外山滋比古氏の本は、TUTAYA神谷町店ではいつも目に止まります。書店員さんの好みなのか、このエリアの客層を意識してなのか、あるいは私の目に止まるだけなのかは分からないのですが、ファンとなればやはり自然に手にとってしまうのです。 『テレ東のつくり方』 (大久保直和著/日経プレミアシリーズ) 『ガイアの夜明け』、『カンブリア宮殿』、『未来世紀ジパング』の3番組にスタート時から現在まで深く関わってきたプロデューサーによる、テレビ東京の名物3番組制作の舞台裏や奮闘の軌跡の打ち明け話。テレビ番組への企画提案を実現したいと、日々、悩み奮闘しているPRパーソンとしては手に取ってしまうわけです。 「ワールドビジネスサテライト」も然りですが、多くの企業から(この番組に)「登場することができれば、これ以上嬉しいことはない」と言われるほどに評価されるテレビ東京のドキュメンタリー番組。本書を読むと、ここに至るまでには、優秀なテレビマンたちの並々ならぬ工夫と苦労と、さらには幾多の摩擦や苦い経験があったことが、ひしひしと分かります。 当たり前なことですが、本を読んだところで、テレビの企画を実現するための“秘策”が手に入る訳はありません。それでも、相手を知ること、わずかでも優秀とはいえ普通の人間であるテレビマンたちの、番組制作への向き合い方を知ることで、自身の中で、日頃感じがちな心理的ハードルを低くすることはできます。そして、「これだけのことをやっているテレビ制作なのだから、チャレンジングな気持ちやアイデアなくしては、そう簡単ではない」と、納得できるのです。 「アイデアは『組み合わせ』」という言葉は、改めての示唆。「少し足したり引いたり、違う距離から見たりするだけで、何かできるかもしれない」という気概をいただきました。 テレビ東京が神谷町から六本木一丁目に移転して、少し丘の向こうになってしまいましたが、積極的に提案して、途中のドイツ料理レストランにももっと立ち寄りたいものです。 『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』 (矢部万紀子著/ちくま新書) 同僚のFさんは、思えば長い付き合いになるのですが、喜怒哀楽あからさまな私と違って、常に冷静沈着です。とはいっても、時折、少しだけ不機嫌とご機嫌を表すときがあります。ご機嫌感が垣間見られるつぶやきの多数は、ペットのチャック君との時間や空間なのですが、朝ドラに関する話題も少なからず。朝ドラが8時スタートになってからも、自身はちょうど家を出る直前でバタバタしているので、たまにつまみ食いのように見るくらいしか朝ドラを知りません(もちろん、BSや土曜日のまとめ見などで見られることは知っています)。 TSUTAYAでこの本が目に止まったのは、「このクールなFさんを夢中にさせる朝ドラの秘密は何か」という思いが、常々、頭の隅にあったからでしょうか。 さっそく読み始めたのですが、まいりました。言及されているシーンが頭の中で浮かび上がってきて、朝の電車の中で目頭おさえるほどに・・。特に、断片的にもほとんど見ることのなかった「ごちそうさん」、「カーネーション」、「あさが来た」に泣かされました。 朝ドラ1本は約36時間ですから、その数本分のエッセンスがぐっと詰まっていて、読み終えるとすっかり朝ドラ通に・・・。巷で聞いていた朝ドラ人気と視聴率とが、意外にズレていることも興味深い事でした。 もちろん、すべての朝ドラを最初から最後まで絶賛、というわけではなく、例えば「描写せずに台詞で語らせる」ことを「うすっぺらいドラマ」などと率直な批判もあります。映画でも時々同じように感じることがあるので、読んでいてハマったのは、その視点でした。だからこそ褒めるポイントにも納得ができて、「うんうん」、「そーだそーだ」と共感できました。 朝ドラを通した働く女子への賛歌・応援歌。一生懸命な女子への著者の温かい視線が伝わりました。何かと凝り固まりがちな自身ですが、朝ドラに限らず巷で人気のドラマも少し見てみようかと、前向きな刺激をもらった気がしています(穂)